絵画・建築・庭園すべてが極上。葉山・山口蓬春記念館で至福のアート体験を
葉山町|【更新日】2023年5月5日

著名な芸術家に愛される葉山には、歴史的に貴重な建物がいくつも残されています。
山口蓬春記念館もそのひとつ。実際に画家が暮らした家屋を美術館として、一般公開しています。
絵画はもちろん、画室の住居や和風庭園には美のこだわりがぎっしり。小規模ながらも、見ごたえ抜群の山口蓬春記念館をご紹介します。
目次
アート好き必見!画家のこだわり満載の山口蓬春記念館
山口蓬春は、大正~昭和時代にかけて日本画の発展に貢献した日本画家です。
1948年から1971年の間、亡くなるまでを過ごした住居と画室が、現在の山口蓬春記念館として公開されています。
西洋絵画の手法を取り入れ意欲的に作風を変えた蓬春の日本画はもちろん、「すっきり見える」ことを追求した画室にも美へのこだわりがいっぱい。
画題となった美術品や庭園も見ごたえがあり、アート好きにはたまらない空間になっています。
中国の古典から白熊まで。作風を進化させ続けた山口蓬春
生涯作風を変え続けた画家の絵の変遷が面白い
山口蓬春は生涯を通して、画風をどんどん変えていきました。
そのため、学芸員の方も「どれが代表作かと聞かれると困ってしまう」とのこと。
若い頃の蓬春は、古典絵画の模写に励んでいました。写真は中国の古典絵画で人気の題材である「草蟲図」。
花と昆虫、トカゲが精緻に描かれています。
右は江戸時代のもので、左は同様の作品を蓬春が模写したものです。25歳から30歳の間に製作されました。
これも日本画?ポップな白熊の絵にほっこり
蓬春は「これが日本画?」と驚いてしまうようなポップな作品も描いています。
写真は「望郷」という白熊とペンギンの絵。白熊の、なんとも言えない表情が愛らしいですね。
戦後、マティスやブラックなどの西洋画にも大きな影響を受け、自由に創作の幅を広げてきた山口蓬春。
「望郷」は60歳のときの作品です。
下絵と完成作品両方を見ることができる貴重な場所
日本画に詳しくない人でも、製作過程が分かりやすく展示されているのも魅力のひとつ。
蓬春が細部まで観察して描いた写生や、写生のパーツを組み合わせて構図を作る下図なども完成作品と一緒に展示されています。
こちらの「瓶花」は下図と合わせて展示されており、館内では黒い花瓶の実物も見ることができました。
製作過程を知ることで、より日本画を身近に感じることができますね。
令和よりモダン?近代数寄屋建築の名匠が手掛けた画室
庭園が見下ろせる大きな窓が開放感いっぱいの画室
展示室の奥には、蓬春が実際に使用していた画室がそのまま残されています。
蓬春の好みを知り尽くした、学生時代からの友人で数寄屋建築の名匠・吉田五十八が設計した画室は、昭和の建築と思えないほど無駄な装飾がなくスッキリモダン!
大きく開放できる窓から、かつては海も見えたのだそう。窓は壁の中に完全収納されるようになっています。
障子がスッキリ隠れるこだわりの壁面収納
窓のみならず、窓側と作業スペースを区切る障子も、壁面に引き込まれ見えなくなる設計になっています。
写真は障子を開け放った状態。大きな紅葉の絵の左側、まるで襖を外した跡のような部分に障子が収納されているのです。
障子の上には欄間(らんま)が来ることが多いですが、絵に影が映らないよう欄間も作りませんでした。
他にも柱が目立たないよう壁のなかに作っているなど、こだわりがいっぱいです。
三角のテーブルは特注品!芸術家目線の居住空間
学芸員の吉田さんによると、山口蓬春は「非常に社交的で、話も上手な人」だったそう。文化人の友人も多く、来客も多い家でした。
二階の和室に銀座から料理人を招いて宴会を催すこともありました。その際に重宝したのが、特注の三角のテーブル!
組み合わせて使うと長机にも円卓のようにも使える優れモノです。
固定観念に囚われない、自由な芸術家の発想が活かされていますね。
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作画のモチーフにもなった季節の花々を眺める庭園歩き
草木や鳥、動物などの自然を画題にすることが多い日本画。
山口蓬春邸の庭は、絵のモチーフとなった花々のほか、画家の仲間から贈られた梅の木や桜の木など、文化人たちの交流のあとも残っています。
少し傾斜のある庭園は趣があり、くつろいで歩ける小径です。
編集部が訪れた日は、梢から間近にウグイスの声が聞こえ、足元にはリンとしたイチハツの花が咲いていました。
山口蓬春記念館でアートとチャレンジ精神を見つけよう
画家のこだわりや、チャレンジ精神を垣間見ることができる山口蓬春記念館。
アートを楽しむことができるのはもちろん、新しいことに挑戦する大切さや、自分のこだわりを貫く精神力などを感じることができます。
日本画についての解説もわかりやすいので、知識がなくても楽しめます!ぜひ気軽に足を運んでみてくださいね。
山口蓬春記念館へのアクセス
- 【住所】
神奈川県三浦郡葉山町一色2320
【料金】 一般 600円/高校生以下 無料
【駐車場】 なし
※企画展の内容によって展示作品が異なります。
※掲載時の情報です。最新の情報は公式ホームページにてご確認ください。