昭和初期の純和風建築と伝説の将軍をめぐる「伊東東郷記念館」
伊東市|【更新日】2023年4月9日

日露戦争でロシアを打ち破り、伝説の将軍として今も東郷神社に祀られている東郷平八郎元帥。その元帥が晩年を過ごした住宅が伊東市に現存しています。
昭和3年に建てられた住居は大切に守られて、今も当時の趣をそのままにしています。今回は伊東自然歴史案内人会の鈴木幟さんに案内をいただいて、その魅力をお伝えします。
目次
明治の大将軍・東郷平八郎と伊東のご縁とは
東郷元帥が晩年を過ごした別邸
ロシアのバルチック艦隊を日本海海戦で打ち破った東郷元帥。
英雄となった東郷元帥は軍の第一線から退いた後も、昭和天皇皇太子時代の教育係など国の要職を務めます。そのお役目を退いたのが昭和3年のこと。
リウマチを患っていた奥様の療養にと温泉地である伊東に別邸を建て、昭和4年から8年までを過ごしました。その建物が伊東東郷記念館として残っています。
多くの人の手で守られてきた純和風建築
晩年を伊東で過ごした東郷元帥は昭和9年に逝去します。主人のいなくなった別邸の保存を名乗り出たのがブリヂストン創業者・石橋正二郎氏。
東郷さんの大切な家は釘一本打ち替えるべからずとし、石橋家の別荘として大切に守ってきました。
現在は令和初の国登録有形文化財と、伊東市の指定文化財に指定されています。
東郷ファンが集う聖地
小説「坂の上の雲」をはじめ、数々の小説や映画に登場する東郷元帥のファンはいまだに多くいます。東郷記念館も彼らの聖地のひとつ。
伊東自然歴史案内人会の鈴木さんによれば現在でも年間で2000人ほどが訪れるそうです。
記念館には東郷ファン、歴史ファンを満足させてくれる品がたくさん。
連合艦隊のミニチュアモデルも展示されていました。
案内人会が語る東郷将軍エピソードは一聴の価値あり
伊東で穏やかに過ごした生身の東郷平八郎とは
記念館では伊東自然歴史案内人会による解説も行っています。
案内人会の方の語る東郷元帥は、海遊びの学生を風呂に入れたり、漁師と気さくに会話するなど、軍神のイメージとはかけ離れたものばかり。
他では聞けない素顔の東郷平八郎に触れることができる貴重な体験でした。
歴史ファンも大満足の、案内人会の方のおもてなし
こちらの額に飾ってあるのは東郷元帥直筆の書。「雄風」と書いて「おさかぜ」と読みます。
日本海海戦で秋山真之が日本軍大本営に送った「天気晴朗ナレドモ波高シ」の電文はとても有名ですが、その時の海に吹いていたのが「雄風」です。
それを元帥が昭和6年に書として認めました。案内人会の方の解説ではこうしたエピソードが次々と出てきます。
解説を聞きたい方は事前予約を
伊東自然歴史案内人会では毎週日曜10時~15時の間、記念館に常駐し来館者に解説を行っています。
東郷元帥のエピソードはもちろん、伊東との関わり、そして邸宅や庭のこだわりも柱一本、ガラス一枚に至るまで丁寧に教えてくれます。
東郷愛に溢れた案内人会の方の解説は旅の思い出になるはずです。
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文化遺産の純和風建築をすみずみまで探索
お次は邸宅の風呂場。元帥の奥様の湯治のために建てた邸宅ですから、源泉が引いてあります。
しかしながら、リウマチが進行してしまった奥様は伊東にはほとんどこられなかったようです。実はこの温泉、温度はだいぶ低いものの、まだお湯が湧いているとのこと。
ほか台所や離れ、お手洗いなども自由に見学でき、日本の伝統的な建築を堪能することができました。
伊東市街の散策コースにおすすめ
記念館は伊東駅から徒歩15分のところにあります。近くには伊東大川があり、川沿いに歩くとすぐに伊東港です。
川を挟んだ向いには、東郷記念館と同じ時期に建った東海館もあるので、記念館と併せた昭和初期の建築巡りもできます。
散策途中に記念館に立ち寄るというのもおすすめ。
明治の歴史と昭和の建築が楽しめる、伊東市中心部の観光スポット
伊東東郷記念館は歴史ファン、古民家ファンにはたまらないスポットです。訪れて感じるのは記念館に関わる人たちの東郷元帥への愛。
釘1本替えることなく保ってきたブリヂストンや伊東市、そして案内人会の方々の愛情が邸宅から伝わってきます。
平屋の一軒家とこぢんまりした建物ですが、訪れてよかったと余韻の残る観光スポットでした。
伊東東郷記念館へのアクセス
- 【住所】
静岡県伊東市渚町3-8
【開館日】 日曜日
【料金】 200円(中学生以下無料)
【駐車場】 なし
※掲載時の情報です。最新の情報は公式サイトをご確認ください。