上毛三山「赤城山」で、さわやかハイキング
「裾野は長し、赤城山」と上毛かるたにも読まれた、雄大な稜線が印象的。標高1500メートル前後のカルデラ内は緑にあふれ、都心よりも気温が10℃低いという。涼風に吹かれながら、快適なハイキングを楽しみたい。
![多彩な湿性・高山植物が観察できる覚満淵 多彩な湿性・高山植物が観察できる覚満淵]()
群馬県のほぼ中央に位置する赤城山は、同県の榛名山、妙義山と合わせて上毛三山と呼ばれる。日本百名山にも数えられるが、赤城山という峰はなく、主峰の黒檜山のほか、駒ヶ岳、地蔵岳、荒山、長七郎山などを含めた総称として使われる。山頂部のカルデラには大沼、小沼などの湖や湿原があり、その周囲をミズナラやダケカンバの樹林が覆う。真夏でも涼しく、自然豊かな環境から多くの文人墨客にも愛された。
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登山初心者向けの地蔵岳。されど眺望は一級品
![地蔵岳山頂の大パノラマ。道中の登山道も整備され歩きやすい 地蔵岳山頂の大パノラマ。道中の登山道も整備され歩きやすい]()
あまり無理せず、赤城山の“いいとこ取り”コースを組むならば、県立赤城公園ビジターセンターをスタート・ゴールとして、覚満淵(かくまんぶち)、地蔵岳、白樺牧場、大沼を回るコースがおすすめ。歩行距離は約6.5キロ、ゆったり歩いても4時間ほどだ。覚満淵は周囲800メートルほどの湿原で、別名は「小尾瀬」。ミズバショウ、ニッコウキスゲなどの湿性・高山植物を木道の上から観賞できる。鳥居峠、小沼と少しずつ高度を上げ、八丁峠から40分ほど登ると標高1674メートルの地蔵岳山頂に着く。北側の視界が開け、主峰・黒檜山とその麓に広がる大沼が一望できる。山頂に吹く風は汗ばんだ体に心地よく、昼時であれば弁当を広げるのもよい。山頂から足元に注意して白樺牧場まで下りたら、車道脇の遊歩道を歩いて大沼へ。春から初夏にはミズナラ、ダケカンバの新緑が美しく、セミやカエルの大合唱があちこちから聞こえてくる。大沼ではボート遊び、キャンプなども楽しめ、北岸の小鳥ヶ島には赤城神社が立つ。祭神の赤城姫は女性の願い事を叶え、美人の子どもを授けてくれるのだとか。近年パワースポットとしても人気だ。
初夏にはレンゲツツジの花が牧場いっぱいに
![新緑の緑にレンゲツヅジのオレンジ色が映える 新緑の緑にレンゲツヅジのオレンジ色が映える]()
赤城山は関東屈指のレンゲの名所。5月中旬から6月下旬まで、ヤマツツジ、ドウダンツツジなど14種類約50万株のツヅジが競うように花を咲かせる。なかでも、白樺牧場のレンゲツツジ大群落は有名だ。その数は10万株とも言われ、高さ1~2メートルの木にラッパ型をしたオレンジ色の花が密集して咲く。白樺牧場の広さは約95ヘクタール。6月上旬から10月上旬に約95頭の乳用牛(ホルスタイン種)を放牧するので、運が良ければレンゲツツジの大群落とのんびりと草を食べる牛を同時に見られるかも。そう聞くと牛がツツジを食べない? と疑問を抱く人もいるだろう。答えはNO。ツツジ類は毒を持つため、牛が口にすることはない。レンゲツツジ周辺の草をどんどんと食べてくれるおかげで、写真のような景観が維持されている。
白樺牧場に隣接する赤城山総合観光案内所には展望デッキがあり、レンゲツツジの大群落を眼下にできる。館内では志賀直哉、武者小路実篤ら赤城山ゆかりの文人などをパネルで紹介。売店で販売する濃厚なソフトクリームもおいしいと評判だ。
薄い氷のような湯の華が浮かぶ茶褐色の温泉
![露天風呂に浮かぶ白い膜が赤城温泉の特徴である石灰花 露天風呂に浮かぶ白い膜が赤城温泉の特徴である石灰花]()
ハイキングや山登りを楽しんだ後は赤城温泉でひと汗流そう。標高900メートルの中腹に「御宿総本家」「赤城温泉ホテル」「花の宿湯之沢館」、少し下ると「旅館忠治館」「滝澤館」と5軒の温泉宿がある。その歴史は奈良時代まで遡れ、江戸期の元禄2年(1689)に前橋藩主・酒井忠挙が湯小屋を設けてから庶民の間に広まった。明治には湯治客で賑わい、中腹の狭い土地に寿司屋、豆腐屋、髪結いなどもあった。
泉質はカルシウム・ナトリウム・マグネシウム炭酸水素塩温泉。湧出時は無色透明だが空気に触れると茶褐色に変色する。カルシウム成分が多いため、とくに中腹の3軒では浴槽の湯を長時間揺らさないと表面に石灰花(湯の華)と呼ばれる薄い膜が張る。浴槽の縁や床には鍾乳石や珊瑚のような石が付着しているが、これらは温泉成分が結晶化したもので、天然温泉の証でもある。肌に敏感な女性が風呂上がりに化粧水を塗るのを何時間も忘れてしまうほど、湯上がりに肌がしっとりするのが特徴だ。