湧水の里・安曇野で、わさび田&美術館巡り
川端康成が「残したい 静けさ 美しさ」と評した安曇野。北アルプスの山並みと幾筋もの河川が織り成す風景は、昔も今も旅人を魅了する。本格的な登山、里山歩き、美術館巡り、温泉保養など旅の楽しみ方は多彩。
![標高約1000メートルの長峰山から望む北アルプスと安曇野 標高約1000メートルの長峰山から望む北アルプスと安曇野]()
長野県のほぼ中央に位置する安曇野市は、2005年に豊科町、穂高町、三郷村、堀金村、明科町の5町村が合併して誕生。西部は燕岳、大天井岳、常念岳など標高3000メートル級の山々が連なる山岳エリア。北アルプス表銀座を目指して、多くの登山客が訪れる。一方、東部は北アルプスを源とする中房川、烏川などが犀川に合流する平坦な複合扇状地。「安曇野」と呼ばれ、湧水や堰などを利用したわさび田や田園が広がる。水辺や里山の風景を楽しむウォーキングは、新緑の5月中旬~下旬や、紅葉の9月下旬~10月下旬がベストシーズン。個性的な美術館が集まるアートスポットや森に囲まれた穂高温泉郷もあり、美術鑑賞や温泉保養でリフレッシュできる。
日本一のわさび畑・大王わさび農場ではわさびグルメも楽しみ
![北アルプスの清らかで豊富な水を利用したわさび田 北アルプスの清らかで豊富な水を利用したわさび田]()
今や世界各地で「WASABI」として親しまれている日本原産のわさび。安曇野市は日本一の生産量を誇り、なかでも万水川、蓼川、欠川の合流地点・三角島周辺は、北アルプスの地下水を利用したわさび栽培が盛ん。蓼川横にある大王わさび農場は、東京ドーム11個分もある日本一広いわさび畑。“わさびづくし”の定番スポットとして、安曇野観光には欠かせない。農場内には散策路が設けられ、湧水が流れるわさび田や、映画やテレビのロケ地となった三連水車などを見ながら30分ほどでひと回りできる。散策後は、わさびコロッケやわさびソフトなど、産地ならではの鮮度のいいわさびグルメを味わいたい。農場周辺には穂高川沿いのわさび園や、日量70万トンもの湧水量を誇る安曇野わさび田湧水群(名水百選)などがあり、北アルプスや田園風景を見ながら、ウォーキングが楽しめる。路傍にたたずむ愛らしい道祖神を探すのも楽しみ。
北アルプスの自然に溶け込んだ個性派ぞろいの美術館
![ツタのからまるレンガ造りの碌山美術館 ツタのからまるレンガ造りの碌山美術館]()
芸術や美術に興味があるなら、美術館巡りも一案。北アルプスの麓、安曇野市から白馬村周辺には19の美術館、博物館があり「安曇野アートライン」と呼ばれている。北アルプスの山並みにマッチした外観や緑豊かな森に囲まれた建物など、施設を取り巻く自然環境がアートそのもの。展示作品だけでなく、体験工房やカフェを併設する施設もあり、芸術や美術を身近に感じられる。安曇野周辺は、市内を南北に走る山麓線(県道25号)を中心に美術館やギャラリーが点在。代表的な施設は、絵本画家いわさきちひろを中心に世界各国の絵本画家の作品を展示する安曇野ちひろ美術館、現代のフランス画壇を代表するジャン・ジャンセンの専門美術館・安曇野ジャンセン美術館、安曇野生まれの彫刻家・荻原守衛(碌山)や、高村光太郎らの力強い彫刻が並ぶ教会風の碌山美術館など。安曇野アートヒルズミュージアムでは吹きガラス体験もできる。
マイナスイオンたっぷり、森林浴も楽しい穂高温泉郷
![くぐると吉運になる開運・招福の石がある穂高温泉郷の有明山神社 くぐると吉運になる開運・招福の石がある穂高温泉郷の有明山神社]()
安曇野観光の宿は、北アルプスの山麓の穂高温泉郷が人気。アカマツやカラマツの木立に囲まれ、約35の温泉宿がある。賑やかな温泉街はなく、宿と宿の間には豊かな緑が生い茂り、別荘地のよう。静かで落ち着いた雰囲気は、保養にも向いている。湯は10キロ以上離れた燕岳の麓、中房渓谷に湧く有明温泉を引く。泉質は、滑らかな肌触りの弱アルカリ性単純硫黄泉。毛細血管を拡張させる効果や炎症を抑える特効性があり、神経痛、リウマチ、糖尿病などに適応するという。宿泊施設はホテルが3軒、旅館が33軒。リゾート風のホテルのほか、古民家風の旅館もあって宿選びも楽しみ。ほとんどの宿に、木々に囲まれた露天風呂がある。森に溶け込んだようなロケーションは、旅の思い出になること間違いなし。周辺は美術館をはじめ、有明山神社や重文松尾寺薬師堂などの神社仏閣が見どころも充実。散策後は八面大王の足湯で、ひと休みしてみては?