1. 世界遺産登録で賑わう富岡製糸場へ

達人指南

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世界遺産登録で賑わう富岡製糸場へ

  「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界遺産に登録された富岡製糸場。その価値と魅力とは?

創業当時の隆盛を感じさせる風格ある門構え

  明治5年(1872)、富国強兵と殖産興業を重点政策に掲げる明治政府が、日本の近代化のために最初に設置した官営工場が富岡製糸場。それまで生産量が限られていた生糸の大量生産を実現した「技術革新」と、世界と日本の「技術交流」を果たした歴史的功績が認められ、平成26年6月に世界遺産文化遺産に登録された。群馬県のほぼ中央に位置する富岡市に開かれた、東京ドームの1.2倍にあたる5万1596平方メートルの敷地には、木骨レンガ造りの東繭倉庫をはじめ、フランス製300人繰りの機械を備えた繰糸場、女工たちが暮らした女工館など、明治初期の開業時の建物が点在し、見どころ満載。日本の近代化を推進し、世界列強の仲間入りを実現させた産業遺産を訪ねてみよう。

座繰り体験もできる東繭倉庫で歴史を学ぶ

木骨レンガ造り、切妻2階建ての東繭倉庫。重厚かつ壮大な建物だ

  正門をくぐってまず目に飛び込んでくるのは、全長104.4メートルにも及ぶ重厚な東繭倉庫。製糸場内の数ある建物の中でもメインの見どころである。1階中央部には中庭に通じるレンガ積みアーチの通路があり、そのキーストーンには「明治5年」と刻まれ、開業当初からの遺構であることを物語っている。明治の終わり頃まで養蚕は年に1回の春蚕のみで、1年間操業分するための原料繭を一度に大量に買い入れたために、このような壮大な建物が必要だった。
建物内は資料展示室になっていて、パネルやビデオ、実物の機械を使って富岡製糸場の歴史や役割を紹介している。昭和62年に操業を停止するまでの歴史にはじまり、フランスの技術を日本式に工夫した機械や建築構造、操業を指導したフランス人ポール・ブリュナの横顔など、この製糸場の建設と操業がいかに大きな国家プロジェクトであったのかがよくわかる。繭から生糸を取る座繰り体験(土・日曜・祝日の9時30分~12時〈12月~3月は10時~〉・13時~15時)にもチャレンジしてみたい。

世界最大規模だった繰糸場など建物群をめぐる

富岡製糸場の中でも一番の広さを持つ、メインの施設

  当時、世界最大規模を誇った富岡製糸場。建設は明治4年にはじまり、翌年7月に完成。10月4日には歴史的な操業が開始された。その時全国から集った400人以上の工女が働いたのが、東繭倉庫の南隣にある繰糸場だ。ここも内部が公開されているが、その規模には誰もが驚かずに入られない。フランス製300人繰りの繰糸機械が通路の両側にずらりと並び、操業時の活気まで伝わってくるようだ。
内部が公開されているのは東繭倉庫と繰糸場だけだが、そのほかの建物も実に見応えがある。指導技師のブリュナが明治8年(1875)まで家族と居住したブリュナ館は、周囲にベランダをめぐらせたモダンなコロニアル様式。フランス製の窓ガラスをはめた女工館、男性のフランス人用宿舎として建てられた検査人館、東繭倉庫と対をなす形で建つ西繭倉庫などなど。いずれも国の重要文化財に指定されている、貴重かつ重厚な建築物が点在している。

もっと詳しく知りたいならガイドツアーへの参加がおすすめ

ガイドツアーで見識を広げる!

  場内の見どころや展示物には詳しい説明が添えられ、自由に見て回っても楽しむことはできるが、せっかく来たのなら無料のガイドツアーに参加するのがおすすめだ。製糸場の歴史や建築物に精通した専門ガイドの説明を聞きながら約40分で場内を1周するというもの。「こんなに大きな東繭倉庫ですが、木枠で頑強に支えられているため耐震性が強く、東日本大震災でもガラスが数枚割れただけだった」とか、「繰糸場に柱がないのは、1尺角の通し柱で建物を支えるトラス構造になっているため」など、説明板を読んだだけではわからない解説を聞くことができる。9時30分から16時までの30分毎(12時~13時は休み、9時30分は4~11月のみ、16時は4~9月のみ)に受付前に集合すれば誰でも参加できる。

富岡製糸場へのアクセス

  施設情報
住所:群馬県富岡市富岡1-1
電話番号:0274-64-0005
入場時間:9時~17時(入場は30分前まで)
定休日:なし
料金:500円
http://www.tomioka-silk.jp/

車で

  練馬ICから関越自動車道・上信越自動車道経由103キロメートル、1時間20分
徒歩5分に市営駐車場50台(最初の30分無料、その後30分ごとに100円)

電車で

  東京駅から上越新幹線で50分、高崎駅で上信電鉄に乗り換えて35分上州富岡駅下車徒歩15分

バスツアーで富岡製糸場へ行こう

  車だと渋滞が気になったり、電車だと座れなかったり…富岡製糸場までの移動時間は意外と苦労する人が多い。また世界遺産登録による影響で大変混雑しており、入るまでに時間がかかることもあるようだ。そこでおすすめなのが “バスツアー”。

バスツアーなら既に団体予約してあるので、入れないということはない。
さらに専属のガイドがついている場合もあるので、より知識が深まるだろう。

≪東京発≫富岡製糸場へ行くバスツアー

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