歴代藩主とその家族の墓が並ぶ厳かな空間に垣間見える交易の歴史

松前家の菩提寺である法幢寺の裏手にあるのが国指定史跡「松前藩主松前家墓所」。寺町のなかでも最も奥まったところにあり、樹齢400年といわれるケヤキをはじめ大きな木々に囲まれた静謐な空間。ここには、松前家の始祖である武田信広から19代にわたる歴代藩主とその妻子などのお墓が55基並んでいる。
墓碑は家の形をした覆屋があるものが多い。その覆屋をよく見てみると緑っぽい色をしたものと白っぽい色のものがあることがわかる。緑の石は「笏谷石(しゃくだにいし)」と呼ばれる凝灰岩。北陸地方から北前船で運ばれたもので、こちらのほうが古い。石は船のバランスをとる重石としても使われていたもので、やがて時代とともに北前船の航続距離が伸びるとそれにともなって瀬戸内地方の白御影石が使われるようになった。こうしたことからも松前藩の交易の歴史が垣間見える。