ジュエリーアイス
十勝の海に訪れる氷の宝石をきれいに撮る秘訣

透き通った、宝石のように輝くジュエリーアイス。その元となる氷は、北海道東部の十勝総合振興局管内を流れ、太平洋へ注ぐ十勝川が凍りついたもの。冬の寒さに凍った十勝川は、上に車が乗っても割れないほどの強度なのです。豊頃町大津の1・2月の平均気温は氷点下8℃、平均最低気温は氷点下15℃！
なんと平均最高気温すら氷点下1℃というから驚きです。

十勝がこんなに寒くなるのは、「放射冷却現象」が起こるため。十勝は「十勝晴れ」と言われるほど冬は雲がない日が多いので、地表の熱が大気に放出されてしまうのです。雲がない日が多いのは、日高山脈で雪雲が遮られてしまうから。それにより、十勝川も凍るほど厳しい冷え込みになるのですね。また、広大な面積を誇る十勝平野に冷たい空気が存在し、周りの空気と混ざりにくいため気温が下がり続けます。広い平野の存在も、十勝の寒さの理由のひとつなのです。

さて、では十勝川の氷はどうやってジュエリーアイスになるのでしょう。

潮の満ち引きにより海面水位が上昇することで十勝川の氷が持ち上げられ、割れていくつもの氷塊となります。太平洋へ流れ出た氷塊は波に揉まれ、次第に角がとれて丸みを帯びた形になり、波や風の影響で河口や海岸に打ち上げられ、ジュエリーアイスとなるのです。持ち上げるのが難しい大きさのまま流れ着くものもあれば、手のひらサイズのもの、ぽっかりと穴が開いたユニークな形のジュエリーアイスも。探しながら歩くのが楽しくなってしまうバラエティの豊かさです。

知床や網走、紋別で見られる流氷と同じなのでは？　と感じるかもしれません。流氷は、ロシアのアムール川から大量に流れ出た真水がオホーツク海で海水と混じり合い、海の中で氷となって漂着するもの。白色の流氷に比べ、ジュエリーアイスはクリスタルのような透明さが特徴です。

十勝川が生み出す、ここでしか見られない絶景。その成り立ちを知ることで、より深く楽しめそうですね。