層雲峡温泉氷瀑まつり
真冬に開かれる氷の祭典

層雲峡温泉の名は、大正時代の文豪・大町桂月（おおまちけいげつ）により「中央公論」に発表された紀行文 「層雲峡から大雪山へ」で全国的に知られるようになりました。

現在は、大型ホテルも立ち並び、宿泊施設の数も15軒と豊富に。旭川から車で1時間と好アクセス。層雲峡は北海道を代表する温泉地となりました。しかし、層雲峡の魅力は温泉だけではありません。ロープウェイも整備されており、大雪連峰のひとつ・黒岳の登山ベースとしても利用されている土地。また、層雲峡は24キロメートルにわたって断崖絶壁が続く特殊な地形条件であり、景勝地「大函・小函」や「流星の滝・銀河の滝」を見るため、春～秋には多くの観光客が訪れます。この、断崖から流れ下る滝も凍る寒い冬に開かれるのが「層雲峡温泉氷瀑まつり」なんです。

「層雲峡温泉氷瀑まつり」は、上川町にある層雲峡で毎年1月下旬から3月中旬まで開催され、 2024年で49回を数える歴史ある冬の催事のひとつ。氷柱・氷のトンネル・アイスドームなど、大小30基ほどのさまざまな氷の造形物が石狩川沿いに並び、夜には七色の光でライトアップされる幻想的な氷の王国です。11月上旬から足場を組み、長い時間をかけて形成されます。

「層雲峡温泉氷瀑まつり」は1976年に始まりました。アイヌの英雄・シャクシャインの像を作成したことでも知られる恵庭市出身の彫刻家・竹中敏洋の指導のもとに発案され、第1回が開催されたと言われています。当時、竹中氏は恵庭市の山中に居を構え、立ち木に水をかけて実験を繰り返し、寒さが生み出す氷の芸術品を作り上げました。氷点下の中で水を吹きかけて作るという、寒冷なこの地域ならではのアイディア。現在、まつり会場はなんと1万平方メートルもの広さを誇ります。

セレモニーでは花火の打ち上げが行われ、敷地内には氷の建造物が立ち並びますが、メインの建造物は、例年色々なテーマに合わせた氷像を作るのがここ数年の流れです。毎年人気のスポットが「氷の展望台」。これは高さが13メートルあり、祭り会場全体を360度見渡すことのできる撮影スポット。さらに、「氷爆神社」も設置されており、氷のオブジェに硬貨が付着するようになっている賽銭所は、参加者がみんなで作り上げる作品です。

氷瀑まつりはステージイベントも多彩。氷瀑太鼓、お楽しみ抽選会、氷瀑ウェディング、アイヌ民族の舞踊、幸運の餅まきなど、さまざまなイベントが催されます。イベントの中では、地元の上川町郷土太鼓保存会が熱演する「氷瀑太鼓」に注目を。これは、1968年に、町内の若手経営者を中心として立ち上げたもの。怒涛のリズムを刻む独特の太鼓曲は、とめどなく流れ続ける石狩川を表すと言われています。この地域に続く生活の歴史を感じさせる力強い太鼓は、祭が地域全体で取り組んでいることを表すものです。

1857年に松田市太郎氏らによって発見されたと言われる層雲峡温泉は、単純温泉で無色透明・無味・無臭。肌に対する刺激も少なく、体にやさしい温泉。リウマチや糖尿病、高血圧などにいいと言われています。温泉ホテルの他に、層雲峡温泉街の中心地に町営の天然温泉「黒岳の湯」があり、日帰り入浴もできるため立ち寄りやすいと人気です。ここはふたつの大浴場と露天風呂、サウナ、水風呂等を備えています。

層雲峡同様に大雪山の山麓には魅力的な温泉がたくさん。1954～1960年頃に発見された「旭岳温泉」は、大雪山連峰の北東・切り立った大渓谷の中にあります。泉質は単純硫黄泉。3つの湯元による毎分140リットルの豊富な湯量が自慢です。塩化物泉で肌がつるつるになると評判。湯冷めもしにくく身体の芯からぽかぽかと温まります。

「天人峡温泉」旭川の南東・約40キロメートル、天人峡の景勝地にあり“秘境の湯”といった感じの情緒ある温泉街です。含食塩芒硝泉でやや黄味を帯びた温泉は、神経痛、創傷等にいいと言われています。

氷瀑まつりのある冬季にも開いており、どちらの温泉も層雲峡温泉からは一度旭川市へ戻り、東川町を経由してのアクセスとなりますので、時間に余裕があるならぜひ訪れてほしいスポットです。

■黒岳の湯
【住所】上川郡上川町層雲峡温泉
【営業時間】10時～21時30分（入館21時まで）
【料金】おとな（満12歳以上）：600円／こども（小学生）：300円／幼児：無料（6歳未満）／6枚綴り回数券（おとな）：3000円
【問い合わせ（TEL）】01658-5-3333

■ 旭岳温泉
【住所】上川郡東川町勇駒別
【交通】車：札幌中心部から約2時間30分(道央自動車道利用　札幌IC→旭川北IC)
　　　　JR：函館本線　札幌～旭川(スーパーカムイ所要80分)→旭川～シャトルバス「いで湯号」に乗換
【駐車場】各宿泊施設にあり

■天人峡温泉
【住所】上川郡東川町天人峡温泉
【交通アクセス】車：札幌中心部から約2時間30分(道央自動車道利用　旭川北IC経由)
【駐車場】あり※温泉施設駐車場は宿泊客専用、日帰り客は専用駐車場を利用(無料)