1. 富士山の伏流水が湧く忍野八海で水辺さんぽ

達人指南

現地の達人が旅行の楽しみ方を伝える観光コラムです。人気の観光地から知る人ぞ知る穴場まで、達人だからこそ分かる一歩踏み込んだ“通”な情報を紹介しています。

富士山の伏流水が湧く忍野八海で水辺さんぽ

  忍野八海は世界文化遺産に登録された「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の1つ。富士山の山肌に降り注いだ雨や雪解け水が、長い旅路の果てに8つの池からあふれ出る。

世界文化遺産に登録された忍野八海(写真/忍野観光協会)

  忍野八海は富士山の北麓に湧く8つの池。奈良時代は宇津湖の湖底だったという。延暦19年(800)、富士山の大噴火により、宇津湖は山中湖と忍野湖に二分。忍野湖は複数の湧水地を残して枯れてしまう。そのうちの8つの湧水地は修験者の水行を行ったとされ「根元八湖霊場」と呼ばれる。一時、衰退したが江戸期に富士溝が盛んになると、一般の信仰登山者が身を清める禊ぎの地として再興される。これが現在の「忍野八海」だ。これらの経緯から「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産になり、世界文化遺産となった。霊峰富士山がもたらす湧き水の里をのんびりと歩いてみよう。


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富士山の神・木花開耶姫命が与えた湧池

湧池の水辺には水車小屋やみやげ店が立つ(写真/忍野観光協会)

  忍野村は山梨県の南東部、富士五湖の山中湖と河口湖の間に位置する。標高963メートルの高原地帯で、南に富士山、東に石割山を望める。東京・新宿からは富士急行富士山駅に出て、路線バスに乗り換える。所要時間は2時間15分ほどた。のどかな田園風景が広がる村内は富士山の絶景スポットがいっぱい。4月下旬からは桜、ハナショウブ、ヒマワリ、コスモス、蕎麦などの花が咲き誇り、富士山とのツーショットを撮影にプロ、アマを問わず、多くのカメラマンが足を運ぶ。
 忍野八海の位置関係は、忍草浅間神社からお釜池まで徒歩10分の間に7つ。お釜池から10分歩いたところに最後の1つ出口池がある。8つの池にはそれぞれ語り伝えがあり、水辺さんぽをより楽しませてくれる。
忍草浅間神社に最も近いのは「菖蒲池」。ショウブ、キショウブが池の東側に生えるのが名前の由来だ。この池の水で身を清めて夫の病気平癒を神仏に祈願した妻は「池のショウブを夫の体に巻け」とお告げを受け、それに従うと病気が治ったという。
 西隣の「鏡池」は今でこそ湧水が少ないが、水面が鏡のようになると富士山を映し出す。3番目の「湧池」は忍野八海で一番賑やかなところ。湧出量も豊富で、水草の揺れる水中ではマスが気持ち良さそうに泳いでいる。この池は富士山が噴火して人々が困り果てたとき、女神が湧き水を与え救済したという。この女神こそ富士山の神・木花開耶姫命である。人々は感謝を込めて毎年祭を行い、この湧き水で神輿を洗うのが習わしになった。
 湧池の南側にある「底抜池」はトチノキの大木がある樹林の中にある。この池で食器や野菜を洗うときに、手を放すと水流に飲まれてしまい、それらはお釜池に浮かび上がったとか。真偽はさておき、おもしろい語り伝えである。

富士山登拝の御守りにされた出口池の湧き水

ひとつだけ離れた場所に湧く出口池(写真/忍野観光協会)

  底抜け池の北側に「濁池」がある。阿原川に合流し、名前に反して湖面は澄んでいる。この池の語り伝えもおもしろい。ある日、身なりのみすぼらしい行者が池の持ち主の老婆に一杯の水を求めたところ、老婆はすげなく断る。すると、天罰が下ったのか池は濁ってしまったという。
 東隣の「銚子池」は、湖底を見ると砂が巻き上がり湧き水の様子がよく分かる。この池には悲話が伝わる。婚礼の日に花嫁がささいな粗相をしてしまい、それを苦にして銚子を抱き身投げしてしまう。その後、池の底に花嫁の顔や履いていた草履が写ったという。現在は縁結びの池として親しまれている。その次の「お釜池」は忍野八海で最も小さいが水量は豊富で、水深の深さが実感できる。
 7つの池から距離を置いた「出口池」は最も大きく、周囲に売店などもないので自然な姿が味わえる。別名は精進池といい、修験者や信仰登山者がここで身を清めた。富士山の伏流水は湧出時まで外気に触れることがないため、より神聖な物とされた。また、この湧き水を持参すると無事登山ができるという“御守り”の役目も担っていた。

蕎麦、豆腐などで忍野の名水を味わう

コシが強くのど越しもいい忍野そば(写真/忍野観光協会)

  水の旨いところに旨い蕎麦あり。忍野にも「蕎麦」自慢の店は多い。もともと忍野は山梨県内でも有数のそば産地で、上質なそば粉を富士山の湧き水で打つのだからマズイわけがない。そば・うどんの製麺所も多く、なかには「こんなに出して大丈夫?」と心配になるほど、試食させてくれる店もある。
蕎麦と同じに「豆腐」も水の善し悪しが左右する。なんと豆腐の90%は水が占めるのだ。水のおいしい忍野村にはかつて10軒を超える豆腐店があった。現在は2店舗が頑張っている。つるっとのど越しがよく、濃厚な大豆の旨味がパッと広がる豆腐は一度食べるとクセになる。この豆腐を目当てに訪れる人も少なくない。
8月頃に訪問するならばトウモロコシも忘れずに。糖度はブドウ並みの20度前後。もぎたての生トウモロコシをかぶりつけるほど、その実はみずみずしい。収穫期には道端に直売所が並ぶのでのぞいてみよう。

忍野八海へのアクセス情報

電車で

  新宿駅から中央線特急1時間、大月駅乗り換え富士急行特急30分、富士山下車。富士急山梨バス内野行きまたはふじっ湖号20分、忍野八海入口下車すぐ

車で

  東富士五湖道路山中湖ICから国道138号経由7キロ、10分

高速バスで

  新宿駅西口から中央高速バス富士五湖線 忍野経由山中湖行き2時間10分、忍野八海下車

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