【インタビュー】生まれ変わる銀水荘の新夕食は「総調理長の熱い想い」に溢れていた | 稲取温泉 稲取銀水荘

静岡・稲取にある旅館「稲取温泉 稲取銀水荘」が2025年4月に夕食新たなスタイルに変更します。今回、たびらいスタッフがその開発を手がける総調理長にインタビューしてきました。静岡愛に溢れる総調理長のおもてなしの心や、銀水荘でしか味わえないであろう「金目鯛の銀鱗焼き」など、こだわりの新夕食を深掘り。溢れる熱い総調理長の想いを知ってから食事を楽しむことで、夕食の時間をワンランクアップできますよ! たびらいスタッフが体験してきた新夕食のレポートはこちら。
一人ひとりのお客さまの顔を思い浮かべ新夕食を考え抜いた総調理長

インタビューを受けていただいたのは、2024年10月から「稲取温泉 稲取銀水荘」と「堂ヶ島ニュー銀水」の総調理長に就任された白橋氏。新卒で銀水荘に入社後、宮内庁御用達「松和会」の流れをくむ料理人たちのもとで修行を続けてきました。若い頃から先輩方に叩き込まれたのは「料理を提供するだけでなく、一人ひとりのお客さまの顔を思い浮かべること」。
「料理がおいしいのは当たり前。その先のおもてなしや付加価値をどう生むかが大事だと思います」と語るように、常にお客さまそれぞれに寄り添った一皿を目指しているそうです。
金目鯛は“煮付け”から“焼き”に、アワビは“煮る”など、「調理」にこだわり有り

定番の“金目鯛”調理を一新
伊豆を代表する名物「金目鯛」は、どの旅館でも“姿煮”が定番です。これまでも「銀水荘」では煮付けを看板料理としてきましたが、今回のリニューアルを機に大きく変更。
「銀水荘に来ないと食べられないメニューを作りたかった」という真意から生まれたのが、金目鯛の銀鱗焼き。あえて煮付けにしないことで、長年培われた“旨みの引き出し方”を活かしつつ、新鮮味あふれる一皿へと進化。
アワビは“煮る”スタイルに
こちらも伊豆の名物「アワビ」。よく見る“踊り焼き”や“踊り蒸し”ではなく、時間をかけて柔らかく煮込む手法を取り入れています。「仕込み段階で味を丁寧に染み込ませるので、完成時には優しい風味と、やわらかな食感を同時に楽しんでもらえます」と総調理長。手間ひまかけた一品だけに、通常の「焼き」や「蒸し」とはまた違った味わいが生まれているそうです。ここだけの話「焼くだけよりも圧倒的に手間がかかっているので、苦労は増えた」とのこと。それでも実際にメニューに組み込んだ情熱に一人の宿泊客としても感謝です。
伊勢海老は“お造り”で
伊勢海老は豪華な「お造り」で提供。金目鯛は焼き、アワビは煮る、伊勢海老は刺身というふうに、それぞれ異なる調理法を採用することで、バリエーション豊かなコースを楽しめます。

お客様に提供する前に丁寧に仕込まれた金目鯛と若手スタッフ。ライブキッチンで実際に調理される様子を見ることができますよ。
伝統料理の煮付けも“追加料理”で継承

一方で、長年のファンがいる「金目鯛の煮付け」や、その他昔ながらの人気メニューも“追加料理”という形で残します。
「時代に合わせて大胆に変えるメニューがある一方、何十年も愛されてきた味はやはり大事。別注として提供を続けることで、昔からのお客さまにも満足してもらえるようになります」と総調理長は語ります。
ライブキッチンや窯元に依頼して新たに作った器、見せ方にもこだわりが

新コンセプトに合わせて、料理の見せ方にも工夫が凝らされています。
「厨房にこもるだけでなく、若いスタッフも表に出てライブ感を味わってほしい」との思いから、ライブキッチンを一部導入。また、“金目鯛の銀鱗焼き” 専用のオリジナル器を窯元に依頼して制作し、「銀の海」をイメージした新しい世界観を表現しています。
また、このインタビュー時には間に合っていなかったものの、刺身提供用のお皿は冷たさを維持しやすい鉄を使ったものを予定しているのだとか。冷たいものは冷たいうちにを実現させるために、細部にまで手を抜きません。
静岡産の海ぶどう?地元食材への追求
仕入れ先は主に「沼津の市場」を活用しつつ、地元・静岡の食材も積極的に取り入れています。「沼津では海ぶどうの養殖に取り組む施設がある」といった新情報にもアンテナを張り、鮮度の高い珍しい食材をコースに盛り込んでいるそうです。なんでも、沼津の海は沖縄の海に近い成分で、養殖が実現したのだとか。
「こうした珍しい地元産があれば、その都度試して、お客さまに驚きや感動を味わってもらえるように工夫しています」とのことでした。
総調理長のこれまでと、これから
調理長はもともと新卒で「銀水荘」に入り、11年勤務。その後、外の世界も学ぼうと上野にある「日本料理海燕亭」で和食の最先端の技術を修業し、「焼津グランドホテル」でビュッフェの経験も積んできました。そして再び「銀水荘」に戻り、堂ヶ島ニュー銀水での調理長を経て、2024年10月より総調理長に就任。ビュッフェと会席、それぞれを知る料理人ならではの視点で、大幅リニューアルを推進しています。
「ただ量が多ければ良い時代は終わった。いまは“良いものを少しずつ”を求めるお客さまが増えていると感じます。おいしいのはもちろん、“おもてなし”をどれだけ表現できるか。金目鯛やアワビといった定番をどう新しく、そして特別な体験として提供できるかが勝負ですね」とにこやかに語る白橋氏。
静岡の海の魅力を最大限に活かしつつ、革新的なアレンジも取り入れる――。そんな調理長の挑戦は、老舗旅館「銀水荘」の新しい時代を切り拓きつつあります。ぜひ“銀水荘でしか味わえない”新たな逸品を試してみてはいかがでしょうか。
たびらいスタッフが体験してきた新夕食の様子はこちら。
東伊豆 > 稲取
稲取温泉 稲取銀水荘
夕朝食付 2名1室
48,400円〜(税込)