長湯温泉 日本一と名高い炭酸泉を堪能する
長湯温泉(ながゆおんせん)は、世界屈指の炭酸泉が人気を集める奥豊後の温泉地。その泉質は素晴らしく、歌人の与謝野鉄幹や種田山頭火らも長湯温泉に関する詩を残したほど。多くの文人をうならせた名湯を旅してみよう。
![開放感抜群の露天風呂「ガニ湯」は長湯温泉の名物 開放感抜群の露天風呂「ガニ湯」は長湯温泉の名物]()
大分県の内部、久住山系の麓の直入町にある「長湯温泉」は、世界屈指の炭酸泉湧出地として知られる。
温泉街の中心を流れる芹川の川原にある混浴露天風呂「ガニ湯」や、ドイツ風の建築が特徴的な「御前湯」、そして炭酸の気泡がはっきり見える湯で有名な「ラムネ温泉」など、長湯には実にバラエティ豊かな風呂がそろっている。
湯船に漬かると気泡がつくほどの高濃度炭酸泉は温浴効果も高く、地元の人はもちろん、観光客も年々増加してきている。その魅力について教えてくれるのは、長湯温泉のシンボル「御前湯」の支配人である田中さんだ。
取材/櫛野 千賀子、平成26年(2014)12月
長湯温泉の歴史と、その魅力とは?
![ドイツの建築様式を取り入れた個性的な建物「御前湯」 ドイツの建築様式を取り入れた個性的な建物「御前湯」]()
平成26年(2014)9月1日、長湯温泉は「日本の名湯百選」に100番目に認定されました。貴重な自然資源を伝承し、日本の中でも特に療養・保養に優れた温泉地として選ばれたのです。その泉質は、昭和初期にこの地で温泉治療の研究に取り組んだ松尾博士により「飲んで効き 長湯して利く 長湯のお湯は 心臓胃腸に血の薬」と称えられたほどです。
長湯温泉の歴史は古く、江戸時代にはこの地を治めていた岡藩主・中川公の入湯宿泊のため、湯屋・御茶屋が設けられたそうです。その後、先進的なドイツの保養温泉地の研究と交流を重ねて、昭和10年(1935)にドイツ風洋館の共同浴場が建設されました。その面影は、温泉街の中心部、芹川沿いに佇む長湯温泉の日帰り温泉施設「御前湯」に引き継がれています。
炭酸泉の特性と長湯温泉の効能 ―― 入浴と飲泉
![ほとんどの温泉施設には、飲泉のためのカップが ほとんどの温泉施設には、飲泉のためのカップが]()
長湯温泉の最大の特徴は、炭酸ガスが豊富に含まれた“炭酸泉(二酸化炭素泉)”といわれる泉質。炭酸ガスは体内に吸収されると毛細血管を拡張し、血行を促進するという性質があります。この他にも、疲労回復や皮膚病、関節リウマチ、神経痛、座骨神経痛のような痛みや運動障害を伴う病気にも効果が期待できます。
長湯温泉を訪れたら、慢性胃炎や便秘症、肝臓病、糖尿病、痛風などに効能がある“飲泉”(温泉水を飲むこと)を試してください。温泉街の数カ所には、「飲泉所」が設置されています。ただし、一度にあまり飲み過ぎるとお腹を壊すこともあるので、初めての人は温泉施設のスタッフなどに尋ねてみてください。
“日本一の炭酸泉”として知られるようになったきっかけ
![温泉水の中の炭酸ガスが小さな泡として肌にまとわりつく 温泉水の中の炭酸ガスが小さな泡として肌にまとわりつく]()
今では長湯温泉の炭酸泉は広く知られていますが、きっかけは昭和62年(1987)のある出来事でした。当時、化粧品や日用品で知られる花王が、入浴剤の製品開発の参考にしようと全国の炭酸泉を回り、成分分析を繰り返していたそうです。その結果、長湯温泉の炭酸ガス濃度は、湯温が40℃を超えるものとしては極めて高く、全国でも他に例をみない貴重な温泉であることがわかり、“日本一の炭酸泉”と呼ばれるようになりました。
平成19年(2007)には、長湯温泉協会が“日本一の炭酸泉”を宣言。温泉地の保全や温泉療養の普及に向けた取り組みが、町を挙げてスタートしています。
現代版湯治で、長期滞在ができる温泉地に
![モダンな外観の「ラムネ温泉」 モダンな外観の「ラムネ温泉」]()
現在、長湯温泉は「現代版湯治」という新たな試みに取り組んでいます。“温泉+食+散策” ―― これらが一体となった湯治スタイルです。
まずは、“温泉”。長湯温泉には気軽に巡ることができる温泉施設や飲泉所がありますので、まずは日本一と称される炭酸泉を堪能してください。次に“食”。湯治の基本は自炊ですが、温泉街には体の治癒をサポートする薬膳料理や、郷土料理を提供する店も点在しています。
そして最後に“散策”も、現代版湯治の大切な要素です。くじゅう連山の山麓に位置する長湯温泉には豊かな自然が残されていて、素朴な日本の原風景にも出合うことができます。一方で、古い歴史を持つ閑静な温泉街の風情を楽しむ場所としてもおすすめです。
これら“温泉+食+散策”がそろった、長湯温泉の提案する現代版湯治を、ぜひ体感してみて下さい。
長湯温泉への交通アクセス
温泉が湧く芹川沿いは、徒歩で回ることができる。ただし、温泉地から少し離れた湧水などのスポットを訪れる場合は、車がよい。
車(レンタカー)で
・大分自動車道の九重インターチェンジから県道40号・県道11号(やまなみハイウェイ)、国道422号経由で長湯まで約53キロ。
・大分自動車道の湯布院インターチェンジから国道210を大分方面へ→湯平温泉入り口を右折→湯平温泉を通って長湯へ。約33キロ、所要時間は約50分。
・大分自動車道の光吉インターチェンジから料金所を右折し国道210号へ→約3.5キロの交差点を左折→国道442号線を竹田方面に8.7キロ進む→「長湯温泉まであと20キロ」の案内板を右折→県道412号線に入り今市の石畳の手前「長湯温泉の案内板」を右折してさらに10キロほど。
電車(JR)で
・JR大分駅から豊肥本線、九州横断特急でJR豊後竹田駅まで約1時間。
→JR豊後竹田駅前にあるバス停「竹田駅前」から、大野竹田バス直入支所行きで約45分。
→道の駅ながゆ温泉で下車、徒歩約3分。