北海道の文化・産業

北海道が開拓されて130年余。入植者が本州各地から集まり、それぞれの地方文化を併せもっていたことなどから、近代からの北海道独自の文化の流れは少ない。連綿と続いた先住民のアイヌ独特の生活様式は見られなくなったが、独自の慣わしや伝統芸能、信仰などを持つ貴重な文化として現代に伝えられている。また、開拓者が使うそれぞれの生まれ故郷の言葉が今に伝えられ、現在の北海道弁となっていることから北海道弁は日本各地の方言の集大成といわれている。北海道弁とひと言でいっても地域差があり、江戸時代、松前藩があった頃に漁業で栄えていた道南(函館、松前、江差など)は、東北地方の漁民との関わりが深かったので津軽弁に似た方言に、道央、道東、道北など開拓時代に人々が住み始めた地域は標準語に近い方言となっている。現在は地名や川、山、湖など約8割がアイヌ語を語源とする。

《タイアップ》

伝統・風習・行事

にしん漁
にしん漁(写真提供/江差町教育委員会)

かつて道南の日本海側ではニシン漁が盛んだった。江差町や松前町などには江戸時代から伝わる祭礼が行われ、入植した土地には彼らの故郷の分霊社が創建され、その伝統行事が続けられている。また、北海道の豊かな自然を生かした、地域振興を目的としたイベントが道内の各地で多く開催されている。

江差姥神大神宮渡御祭(えさしうばがみだいじんぐうとぎょさい)
北海道遺産として認定されている祭り

かつては、ニシン漁の豊漁に感謝して行われていた北海道最古の祭り。370年余の伝統をもち、毎年8月9日~11日に開催される。江差では曳山(山車)を山(ヤマ)と呼び、見どころは10日と11日に行われるヤマの巡行。宝暦年間(1751~64)に作られた神功山に武者や文楽、歌舞伎などの人形を配した豪華な13台のヤマが町内を練り歩く。昔の江差のニシン景気を今に伝える夏の例大祭だ。

北海道神宮例祭
多くの見物客でにぎわう北海道神宮例祭

札幌の北海道神宮は、北海道の開拓と発展を願って明治2年(1869)に創建された。北海道神宮例祭は「札幌まつり」と呼ばれ、100年以上の歴史をもち、毎年6月14日~16日に開催。平安時代の鮮やかな衣装を身にまとった1000人以上の市民が、4基の神輿と8基の山車とともに1キロにおよぶ大行列をつくり市内を悠々と歩く。途中の大通公園では、神輿と山車が見学者にお披露目される。

芸能・工芸・美術・建築

松前神楽
南北海道の神職は必ず会得しなければならない必修科目

北海道最古の伝統芸能。およそ550年前のコシャマインの戦い(歴史のアイヌと和人の戦い参照)の戦勝を祈願して舞ったのが起源とされ、約350年前の延宝2年(1674)からは松前藩主が神官を集め城内で神楽を舞うようになった。以後、松前藩主の庇護のもと神官から神官へと受け継がれ今日に至っている。松前神楽の特色は、神楽専門の者が舞うのではなく、祭典に奉納した神職が舞うこと。舞には千歳、三番叟、翁舞などの能舞を取り入れ、津軽や東北地方の山伏神楽、番楽などにも影響されている。道南の各神社の祭典などで披露され、その伝承者は12人。北海道指定無形文化財。

白符荒馬踊り(しらふあらうまおどり)
子供が踊ることが多い

道南の福島町白符に伝わる。室町時代、津軽からニシン漁の仕事を行うために渡ってきた和人によって伝承されたと考えられ荒馬踊り、棒振舞(ぼうふりまい)、やせやせ踊り、杵振舞(きねふりまい)の4つの踊りからなっている。振舞いや音曲に青森ねぶたのハネトと共通の要素が見られる。7月に行われる白符大神宮祭(白符七夕祭り)で披露される年もある。

ムックリ
ムックリ演奏の様子(C)三浦信行

アイヌ民俗の楽器。日本語では口琴という。長さ10~15センチ、幅1センチほどの薄い竹製で、中央に切れ目(リード)があり、その根元に結ばれた小さな棒付きの糸を引っ張ると切れ目が振動し「ビョーン、ビョーン」という音が出る。竹を口に当てて口内に振動を共鳴させ、口の形や呼吸の変化によってさまざまな音色が生まれる。同時に複数の音を出したり、音程を変えたり、メロディーをつけることも可能。単純な楽器だが、音を出すのは難しい。ムックリは儀式などで使うものではなく、私的に音を体感し、心地よさを楽しむもの。みやげとして阿寒湖のアイヌコタン(アイヌの集落)などで買える。

優佳良織(ゆうからおり)
一つの作品に200~300色の色を使うといわれる

昭和37年(1962)、染織作家の木内綾により旭川市で生産されるようになった北海道を代表する織物。200種類以上の色に染められた羊毛を紡ぎからすべて手作業で織り、作品はまるで油絵のようで、微妙な色の調和が美しい。優佳良織はハマナスやミズバショウなどの草花や流氷、白鳥、摩周湖といった北海道ならではの四季の自然をモチーフに織られている。優佳良織は、旭川の北海道伝統美術村にある優佳良織工芸館で見ることができる。

洋館
国の重要文化財にも指定されている旧函館区公会堂

北海道の西洋建築は、箱館港の開港とともにはじまる。貿易港をもつ函館には、西洋の文化や技術がいち早く取り入れられ、日本人のための洋館や和洋折衷の建物が次々と登場。明治後期には、コロニアルスタイルの旧函館区公会堂など、北海道の風土に合わせた洋館が日本人の建築家によって建てられた。元町界隈は、今も異国情緒が保たれている。函館以外にも洋式ホテルとして建設された札幌の豊平館(ほうへいかん)、小樽には旧日本郵船小樽支店や旧日本銀行小樽支店、旭川には将校たちの社交場として造られた旧第七師団偕行社などが残る。

ニシン番屋
旧花田屋番屋は、現在は道の駅を併設している

北海道の日本海側では、かつてニシン漁が盛んに行われていた。本格的になったのは明治時代から大正時代にかけて。青森、秋田、山形方面から多くのヤン衆と呼ばれる出稼ぎ人が集まり、ニシン漁の全盛期を迎え、海岸沿いにはヤン衆の作業場軒宿泊のためのニシン番屋が建てられた。北海道遺産に認定されている小平町(おびらちょう)の旧花田家番屋は、現存する番屋で北海道最大規模。留萌市(るもいし)の佐賀番屋、苫前町(とままえちょう)の岡田家、石狩市のニシン建網漁場番屋(現在の浜益村郷土資料館)、ニシン漁を営んでいた上ノ国町の旧笹浪家住宅、余市から移築し現在は料亭および旅館として利用されている小樽の旧猪俣家住宅、網元の豪壮な建物を公開している小樽の鰊御殿など、今もニシン漁で活躍した建物が保存・活用されている。

北海道の音楽
一年に一度行われる、江差追分全国大会の様子

北海道にはアイヌの人々が伝承するアイヌ民謡と、和人(アイヌの人々から見た日本人)に歌われていた民謡がある。移住者やヤン衆らによって故郷の歌が持ち込まれ、それが北海道独自の民謡に生まれ変わったものが、一般的に北海道の民謡と呼ばれている。「江差追分」は伊勢松坂の民謡「松坂節」が越後で「越後松坂」という祝唄となり、それが江差に伝わり謙良節(けんりゅうぶし)として歌われていた。さらに信州の「追分節」が越後に伝わり「越後追分」となって北前船で江差に渡り、謙良節と越後追分をもとにして哀調あふれる江差追分が生まれたという。三笠市の炭鉱で歌い踊られていた「べっちょ節」を改変したのが「北海盆唄」。北海道を代表する民謡「ソーラン節」は、ニシン漁の際に歌われた「鰊場作業唄」の一節「沖揚げ音頭」が独自に変化したものだという。

北海道の産業

サイロのある風景は、北海道らしい風景の代表

北海道の産業は大規模農業と漁業が中心。農産物ではジャガイモ、小麦、玉ネギなどの収穫が多く、広々とした土地を生かして酪農も盛んだ。四方を海に囲まれているため古くから漁業が営まれウニやカニ、ホタテ、イカ、ホッケなど海産物の種類は豊富。道内のあちこちに温泉が湧き、また紙の材料となる良質なエゾマツやトドマツが自生していることから製紙産業の割合も高い。

農産物

ジャガイモ 生産量 約223万t 日本一
北海道のカラッとした夏の気候がじゃがいも栽培にはぴったり

ジャガイモの原産地は、南アメリカのアンデス地方。気候風土が北海道と似ていることから、寒さに強く、冷害の影響が少ないため、明治時代から盛んに栽培されるようになった。北海道のジャガイモといえば男爵イモが有名。男爵イモの名は明治末期、アメリカやイギリスから種イモを取り寄せ、北海道の地に合った品種栽培に成功した川田龍吉男爵にちなむ。北海道では男爵やメークインなど約50種を栽培。収穫量は全国の約8割を占めている。

トウモロコシ 生産量 約11万5000t 日本一
たくさんの種類が北海道では栽培されている

トウモロコシはジャガイモと並んで北海道を代表する農作物だ。トウモロコシの生産量日本一は芽室町で、十勝平野の夏の温度差と自然環境が栽培に適しており、北海道の生産量の約1割を占めている。日本でトウモロコシが本格に栽培されるようになったのは、明治時代初期。北海道開拓に伴い、北海道農事試験場がゴールデンバンタムという品種をアメリカから導入したのがはじまり。その後、全国で栽培されるようになった。トウモロコシは米、小麦と並んで世界三大穀物といわれている。

海産物

カニ 生産量 約14万4000 t 日本一
花咲ガニは、濃厚な味で、甘い香気があるのが特徴

北海道の冬の味覚を代表するのがカニ。豊富なプランクトンや海藻に恵まれた極寒の海で育ったカニは旨味が凝縮され、ひと味もふた味も違う。道内で水揚げされるのは主にタラバガニ、ズワイガニ(北海松葉ガニ)、毛ガニ、花咲ガニの4種類。花咲ガニはタラバガニの仲間で、根室近海の一部の海域でしか水揚げされない北海道特有のカニ。花咲港界隈で水揚げされ、茹でると花が咲くように真っ赤になることが名の由来。流通量が少ないことから「幻のカニ」といわれている。

ウニ 生産量 約1万2000t 日本一
やっぱり北海道の海の幸といえば、ウニ

ウニはほぼ北海道全域で獲れ、エゾバフンウニとムラサキウニが主体。ウニは食べるエサによって味が変わるといわれ、北海道のウニはコンブを食べて育つことから味が濃厚。日本海側では5月~8月、オホーツク海方面では羅臼(らうす)が2月~5月、雄武(おうむ)や枝幸(えさし)では4月~6月、襟裳岬周辺では1月~3月が収穫期。ほかにホッケやウニなども北海道が日本一の生産量を誇る。

北海道ブランドの製品

白老牛(しらおいぎゅう)
良質のタンパクたっぷり、コクと甘みが特徴の和牛

道南の白老町(しらおいちょう)で飼育されている黒毛和牛。北海道ではじめて黒毛和牛を導入し、白老牛として飼育を開始したのは昭和29年(1954)。現在、繁殖雌牛5000頭余を有し、年間およそ1200頭を出荷している。雄大な自然と穏やかな気候が飼育に適しており、全国的にも高く評価されている。平成20年(2008)に開催された北海道洞爺湖サミットの晩餐会で、北海道を代表する牛肉として供された。

夕張メロン
初セリでは30万円前後で取引される、北海道の夏の風物詩

夕張メロンの正式な品種名は「夕張キングメロン」といい、夕張市農協組合員および夕張メロン生産組合員のみが生産を認められている高級メロンのブランド品だ。夕張メロンは、審査に合格したメロンだけを「夕張メロン」として販売。不合格のメロンは別名で売られている。作付面積は205ヘクタール、出荷量は4500tで132戸のメロン組合員によって生産され、収穫期は5月中旬~8月下旬。重さは1玉1キロ~2キロが基準。夕張メロンの特徴は非常にやわらかくジューシー、糖度は高くないが果肉と味のバランスや食感がいい。

キタアカリ
栗のような甘さと食感が人気のじゃがいも

昭和50年(1975)、北海道農業試験場において男爵イモとツニカを交配して誕生したジャガイモの品種。北海道の大地に希望の明かりがさすようにと願って付けられたのが名の由来。北海道の作付面積は1844ヘクタール。イモは扁球形でカロチンやビタミンCが豊富。ポテトサラダやコロッケに向き、食味の良さから「栗じゃが」「黄金男爵」とも呼ばれている。近年、家庭菜園でも人気が高まり、旬の6月にはスーパーに並ぶ。

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